2018.04.14
無邪気な少年のようでもあり、淫靡な娼婦でもある。変幻自在の“ジョーカー”が内包する光と影。【EPOCH MAN 小沢道成】

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- 濃密だけど爽快な体験
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- 少人数芝居なのに豪華
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- 一度じゃ物足りない多層構造
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- 俳優だから作れる舞台
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- 劇場の制限を感じない美術
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- 飽きない上演時間
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笑顔の裏に抱えた闇。岩井俊二の映画に魅入られ決めた俳優の道。
この人が舞台に立つと、自然と目が惹きつけられる。心の奥底を見透かされてしまいそうな大きな瞳と、今にも歌い出しそうな大きな唇。無邪気な少年のようでもあれば、淫靡な娼婦のようでもあり、天真爛漫な笑顔の裏側に、決して容易に踏み込んではならない狂気と影を孕んでいる。そう印象を伝えると、彼はにっこり笑って、こう答えた。
「嬉しいです。僕もそういう闇を抱えている人が好きだから」
闇を抱えている人が好き。そう衒いもなく言えるのは、彼自身の「根本はネガティブ」という性格ゆえだろう。小学生の頃からテレビドラマや映画が大好きな子どもだった。ドラマならば、野島伸司。『聖者の行進』に『世紀末の詩』、『リップスティック』など、往年の野島ワールドに魅了された少年のひとりだ。映画で言えば、岩井俊二。中でも『リリィ・シュシュのすべて』は、多感な思春期における聖典だった。
「映画の中で出てくるイジメとか万引きとかレイプとか、ああいうのが全部ドンピシャで。中学生の頃の僕の周りにも、あの映画で描かれているようなものと同じものが渦巻いていた。あの映画は、僕の憧れというか。あの頃の僕の気持ちを代弁してくれているような気がしたんです」
中学には、あまり行かなかった。自ら人に暴力をふるうことは断じてしなかったが、常に反発心や反抗心が、その小さな胸で暴れ回っていた。当時、髪をピンクに染めたのも、周りと同じであることを強要される学校生活に馴染めなかったから。人と同じ、ということが、どうしようもなく苦手で、窮屈だった。
「だから、あの映画を見て決めたんです、俳優になろうって。それで片っ端からいろんなオーディションを受けたんですけど、全部ダメで。どうしようか悩んでいるときに、姉から教えてもらったのが、ある劇団のワークショップでした」
小沢道成の姉は、現在も一線で活躍する画家だ。当時、芸大生だった姉は、とある劇団のフライヤーにイラストを描き下ろしていた。その縁もあって、俳優を志す弟にワークショップを紹介したのだった。
「もともと父が演劇が好きで、小さい頃からよく劇団四季とか連れて行ってもらってたんです。だけど、小劇場には行ったことがなかったから、まったくイメージが沸かなくて。とりあえず行ってみたら、そこでもう人生で初めてと言っていいくらい褒められたんですよ。石をテーマにエチュードをするんですけど、僕のアイデアをいろんな人が面白がってくれた。それが嬉しくて、ハマっちゃいましたね、演劇に」
まだ16歳。同世代の友人が悠々自適に高校生活を満喫している傍ら、彼は決めた。自分は俳優になるのだ、と。
「恐怖や不安は全然なかったです。それよりも、やっと自分の居場所を見つけたっていう気持ちでした」
渇望が、道を開いた。小沢道成の俳優人生を変えた2000人強のオーディション。
それから約5年間、小沢道成は京都の小劇場で俳優活動に勤しみ、さらなる活躍の場を求め、20歳で上京。新しい場所で、自分の可能性を探るつもりだった。しかし、地元の京都と違い、東京には何の地縁もない。知り合いひとりいない小沢を見つけてくれる人など、広い東京の街には誰もいなかった。
「あの頃がいちばん辛かったかなあ。お芝居をするために東京まで出てきたのに、お芝居をさせてもらえる場所がない。ただバイトをするだけの毎日で、一体何をしに東京まで来たのか全然わからなくて。オーディションにも全然受からないし、何もないまま1年だけ過ぎて、もう帰ろうかなって悩んでいました」
そんなもがきの中で舞い込んだ転機が、1枚のチラシだった。新しく劇団を旗揚げするにあたって、劇団員を公募するらしい。劇団の名前は、虚構の劇団。主宰は、鴻上尚史。それは、小沢道成のその後の人生を変えたオーディションの募集チラシだった。
「京都で演劇を始めた頃から、よく父が持っている演劇のVHSを観ていました。その中のひとつが、鴻上さんの『第三舞台』。鴻上さんの言葉が好きで、何度も勇気づけられたし、筧(利夫)さんたち俳優の方々に対する憧れもあった。鴻上さんや野田秀樹さんたちのような、いわゆる80年代演劇が、僕にとって演劇の基準だったんです」
この劇団に入れば、あの鴻上尚史のもとで演劇ができる。芝居をする環境に飢えていた小沢にとって、それは自らの人生を懸けた大勝負だった。何としてでも、このチャンスを掴みたい。審査の課題は、自己PRと3分間の自由演技。小沢は自ら稽古場を借りて、準備に取り組んだ。
「あのオーディションはとにかく本気だった。あんなにも準備して取り組んだのは、あれが初めてだったと思います」
日本の演劇界を牽引してきた鴻上尚史の新プロジェクトだ。業界からの注目度も高い。応募総数は2000人以上にも及んだ。この中から、劇団員の座をつかみ取れるのは、わずかひと握り。その難関を突破したのが、小沢だった。
「手応えはありました。でも、それは内容や評価に対する手応えではなくて。何て言うんだろう。ひとつの目標に向かって、自分がちゃんと練習できたというか、真剣に取り組めたということに対する手応えかな。100%揺るぎなく頑張れたということに対して、今までにない手応えを感じていました」
選ばれる者と、選ばれなかった者に、くっきりと線が引かれる。オーディションというのは、実に残酷な場だ。まだ経験も浅く、技術も甘い青年が、2000人の壁を突破できたのはなぜだったのだろうか。
「わかると思うんです、その人がどれくらいこの芝居に懸けているかというのは。どれだけの想いで、今、この場にいるのか。それって自然ににじみ出てくるものだから、嘘はつけないし、誤魔化せない。技術や個性では勝てない、熱量というものがオーディションの場では大事で。たぶんあのときの僕にはそれがあったから、選んでもらえたんだと思う。きっとそれくらい飢えていたんでしょうね、演劇をするということに」
恩師・鴻上尚史の教え。演劇が、僕をコンプレックスから救ってくれた。
恩師・鴻上尚史との出会いは、俳優・小沢道成に大きな影響を与えたと言う。師からもらったたくさんの言葉が、今の小沢道成をつくっている。
「たとえば、“嫉妬とか嫉みとか、この世界にはいっぱいあるけど、そういう感情はとりあえず置いておいて、一番大事なのは、目の前のやるべきことを一生懸命やることだ”って教えてくれたのも鴻上さん。あとは、“いい俳優の条件とは、プライベートでどんなことがあっても、現場に来るときは頬を叩いて切り替えて、おはようございますって明るく挨拶できることだ”とか。鴻上さんから教えられたことはいっぱいありすぎて、ここでは言い切れないくらいです」
だが、何よりも小沢自身が感謝しているのは、自らのコンプレックスを受け入れ、強みに変える力を与えてくれたことだ。
「僕には、コンプレックスがいっぱいあって。それがずっと僕を苦しめてきました。でも、そんなコンプレックスを、鴻上さんはそのまま言葉にして、舞台上で吐き出す機会を与えてくれた。僕はずっと自分のコンプレックスを吐き出すことが嫌だったのに、実際に舞台で吐き出してみたら、たくさんの人がそれを見て笑ったり泣いたりしてくれたんです。自分のネガティブな部分が、人の心を動かす力になるんだと知ったとき、僕は心の底から演劇をやってきて良かったと思えた。やっと自分の存在を認められた気がした。おかげで昔よりずっとポジティブになれたと思いますよ。でもきっと演劇をやめたら、僕はまたネガティブなところばっかりの人間に逆戻りしちゃう。それが怖くて、僕は演劇から離れることができないんだと思う」
ただ立っているだけで物語を感じられる俳優になること。そのために、自分をひたすら磨き続ける。
鴻上尚史、そして虚構の劇団との出会いを経て、小沢道成の活躍の場は一気に広がっていく。『アントニーとクレオパトラ』では、重鎮・平幹二朗の演技に対する姿勢を見て、俳優のあり方を自ら考えた。虚構の旅団『夜の森』では、木野花から薫陶を受けた。
「今思い返すと、木野花さんとの出会いは僕にとっての転機。それまでの僕は、いろんな人の技術を取り入れたいから、なるべくたくさん舞台を観るようにしているんですけど、いつも間だったりテンポ、声色、仕草、表情といった外から見えるものばかりに意識が向いていた。でも、木野花さんは何よりも中身を大事にされる方。ずっと技術ばかりこだわっていた僕に、大切なことはそれじゃないんだと気づかせてくれたのが木野さんでした。公演期間中はすごく苦しかったです。でも、あれを何とか乗り越えられたからこそ、今もこうして俳優を続けられているんだと思います」
大事なのは、技術ではなく中身。決して完全にクリアできたわけではない。「一生の課題」だと小沢は厳しく自分を戒める。
「俳優をやっている以上、誰かに自分を認めてもらいたい、褒めてもらいたいという欲求はみんなあると思う。でも、それが強すぎると、自我ばかりが前に出て良くない。人が生きてきた人生って半端ない情報量があるから、たとえ何も持たずにポンッと突っ立っていても、それだけでお客さんは何かを感じ取ってくれるはずなんです。ただ、逆に言うと、それは日頃からその人がどういう人生を歩んでいるか、ということが否応なしに出てくることでもあって。だからこそ、俳優はどう日常を過ごすかも大事なことなのかなって今は思っています」
そう自らに言い聞かせるように言葉にした。技術ではない、自分自身の中身で人を惹きつけるということに、小沢は今、真摯に向き合い続けている。
「僕もまだ何かをえらそうに言えるわけではないですけど、ようやく少しは自信を持てたというか。ただ突っ立っているだけでも何か物語を感じてもらえるような、そういう魅力が自分にもあるんじゃないかと思えるようになった。それもすべて、これまで経験したたくさんの舞台のおかげです。鴻上さん、木野さん、谷(賢一)さん、杉原邦生さん、みんな外に向かって技術を発信するというより、自分の心の中がどう動いているか、中身に集中させてくれた。本当に恵まれていると思います」
EPOCH MANは自分が観たいものをカタチにする場。俳優の枠を超え、歩き出した表現者の道。
俳優として着実にステップを踏む一方、小沢は2013年よりEPOCH MANとしての活動をスタートさせた。
「俳優は、お仕事が来るのを待つ立場。ただ、それが5~6年続いたとき、本当に自分は待っているだけで。その状態に危機感を持ったというか、ちゃんと自分から攻めなきゃいけないなと思った。それで、小沢道成という人間をいちばん魅力的にプレゼンできる方法は何かと考えたときに思いついたのが、EPOCH MANだったんです」
EPOCH MANのスタイルは非常に明快だ。会場は、小劇場やアトリエといった小空間。上演時間も、およそ70分~80分程度と、本人曰く「お尻に優しい時間」を貫き、人数も初期こそ4~6人だったが、ここ数年はふたり芝居ないし小沢道成によるひとり芝居がメインとなっている。つくりは、極めてコンパクト。それでありながら、一言では表現し尽くせない余韻を、毎回観客にもたらしている。
「最初は自分のプレゼンという感じでスタートしたんですけど、やるうちにどんどん目的が変わっていって。今、僕がEPOCH MANをやる動機は、自分が観客として面白いと思うものを表現したいから。自分が観たいものをカタチにする場が、EPOCH MANなんです」
小沢道成は、真摯な俳優であると同時に、真摯な観客でもある。観劇の数は年間平均80〜100本。自ら舞台に立ちつつも、これだけ劇場に自腹で足繁く通っている俳優は稀だと言えるだろう。自らの目でたくさんの舞台を観て、感性を養うことで、小沢道成の表現は磨かれている。
「だから僕がEPOCH MANでやっていることは、僕が面白いと思ったことの集合体なんです。たとえば、今回の『Brand new OZAWA mermaid!』で言えば、フライヤーのビジュアルは、僕がヘドウィグ(・アンド・アングリーインチ)が好きで、ああいう世界や雰囲気を自分でも表現してみたいと思ったのがきっかけ。EPOCH MANには、僕のやりたいことがいっぱいつまっているんです」
不幸の中で頑張っている人を描きたい。小沢道成が炙り出す人間のいとしさと愚かしさ。
そして何より秀逸なのは、彼の描くドラマであり、人間だ。『みんなの宅配便』では、都会の片隅の街でひっそりと生きる女の孤独と狂気を、観客が自分の内面を読み上げられているようにしか思えないと悲鳴をあげたくなるほどリアリティたっぷりの台詞で、大胆に、そしてユーモラスに描き切った。
再演もなされた『鶴かもしれない』でも、愛した男にすべてを捧げる女の悲痛な献身を痛々しく、されどケレンミたっぷりに舞台に立ち上げ、観客を圧倒した。小沢道成の描く女たちは、繊細でありながらバイタリティがあって、幸せを求めるがあまりに自分自身を傷つけてしまう。なぜ小沢道成は、こんなにも女性を生々しく、それでいて愛すべき滑稽さを伴って描けるのだろうか。
「たぶんそれは僕が男性目線で女性を捉える分、女性の持つ滑稽さや悲しさや苦しみをより客観的に見られるからじゃないですか。自分のことは自分ではわからないように、異性だからこそ逆にわかるところがある。だから不思議だし面白いんです」
しばしばひとり芝居やふたり芝居は難解という誤解を受けるが、小沢道成の本はサービス精神に満ちている。序盤は人間のおかしさをコミカルに表現して観客の笑いを誘い、それが後半になると途端に切実さや哀愁が帯びて、胸がつまって苦しくなる。
「本当はハッピーエンドを目指しているんです。でも、どうしてもハッピーになりきれなくて。僕の人生もそうなんですけど、ハッピーになりきれないところに共感しちゃうんです」
そう少し自虐的に笑って、彼は続けた。
「惹かれるのは、葛藤している人。そういう人の方が輝いて見えません? 幸せそうな人よりも、不幸だけど、それでも頑張ろうとしている人を描きたい、というのはありますね」
あくまで娯楽でありたい。小沢道成が追求する、自分だけのとっておきの演劇のカタチ。
毎回企みに満ちた作品を発表しているが、小沢自身は自らを「作家」と名乗ろうとは思わないと言う。
「いつも本を書くときは脳内でエチュードをしながら文字を書き起こしているという感覚で。僕の場合は、台本を書く段階からもう演出が始まっているんです。模型を見ながらいろいろ人を動かしてみたり。実際にその役の感情になりきって台詞を書いていく。頭の中で同時に演出も俳優もやっている感じですね。だから、あんまり作家という気がしないのかもしれないです」
自らが本の世界に入り込み、それを文字に変換していく。そんな作業がひたすら続く。だから第一稿を書き上げたときは、いつもページの隅々からむきだしの感情がドロドロと渦巻いている。
「それを一度、数ヶ月置いてみて。しばらくしてから、もう一度、読み返すんです。そしたら客観的に見られるから、改めてこの本のどんなところが面白いか見えてくる。人って、本人が真剣に悩んでいるところほど滑稽だったりするじゃないですか。それを面白おかしく表現できるように、いろいろギミックを足していくという感じですね」
ラジカセを使って、ひとり芝居をしたり。同じ台本を2通りの配役で上演し、片方では小道具をすべて実物、もう片方ではすべて段ボールやクラフト紙で代用してみたり。演劇の虚構性や想像力、遊び心をふんだんに用いて、トリッキーかつポップな世界を小沢道成はつくり上げていく。
「決して僕は芸術家志向ではないと思います。かと言ってエンターテイメントばかりに寄りすぎるのも、ちょっと違う。その両方のいいところをうまくEPOCH MANでは取り入れられたらと思っています。書いている内容も、基本的には自分の心情吐露。でもそれだとただ自分が気持ちいいだけのお芝居になっちゃう。あくまでお芝居は娯楽でありたいというのは、いつも心がけています」
演劇をやっていると、“小沢道成が解放されていく”感じがする。
だから、だろう。EPOCH MANの間口は広い。薄暗い小劇場には不似合いに見えるほどオシャレな恰好の若い女性から、長年劇場に通い続けているであろう玄人筋まで、年齢も性別も学識や嗜好もすべて超越して、小沢道成の愛が訪れる人々を優しく包みこむ。
「やっぱりあのカーテンコールの瞬間が好きなんですね。僕が演劇を続けられているのは、単純に好きだから。まだできることがあるし、まだ出会っていない人もいるし、まだ知らないことがたくさんありすぎる。それを知らないままでいることが悔しいんです。もっと知らない世界を見てみたいし、そこにあるものを手に入れてみたい。そう思う限り、演劇に対する気持ちが冷めることはないと思います」
演劇と出会うまでの自分は、薄暗い陰鬱と倦怠と反発の中にいた。演劇と出会って、人と関わる喜びを知った。自分を少し好きになれた。
「こんなネガティブな自分が、演劇をやっているときだけはポジティブになれるんです。上手くは言えないけど、“小沢道成が解放されていく”感じというか。演劇をやることで、僕の人生が魅力的になっているような。そんな感じです、僕にとっての演劇は」
そう言って、彼は笑った。無防備なほどの屈託のなさと、今にも壊れてしまいそうな危うさと。まるで見る角度によってまったく別の絵が浮かび上がるだまし絵のように、小沢道成の笑顔は相反する印象を見る者に与える。そんな彼だから作・演出や俳優というカテゴライズも、娯楽と芸術というジャンル分けも意味をなさないのかもしれない。キングにもクイーンにもなれる不敵な“ジョーカー”は、ただ板の上から観客を魅了し続ける。
取材・文・撮影:横川良明 画像提供:EPOCH MAN 舞台写真撮影:moco
My ゲキオシ!

月刊「根本宗子」 / 柿喰う客 / 木ノ下歌舞伎
月刊「根本宗子」、柿喰う客、木ノ下歌舞伎ですかね? 初めて小劇場の演劇を見る人でも楽しめるはずです!
面白い演劇はいっぱいあるんですが、この3つを観ればどれかは必ずひっかかって演劇が好きになるんじゃないかなあ!
まだ演劇見たことないという方は是非観てみてください!そして演劇が好きになったら面白い団体さん教えてください!
プロフィール

- 小沢 道成(おざわ・みちなり)
1985年10月17日生まれ。京都府出身。鴻上尚史主宰「虚構の劇団」劇団員。 繊細な身体は役者魂で満ち、様々な性別・属性・年齢に対応する幅広い役をこなす、巧みな演技が魅力。2013年1月に、自身の演劇プロジェクト・EPOCH MANの活動を開始させた。2014年上演作品、カムヰヤッセン『未開の議場』で、佐藤佐吉賞2014(王子小劇場)最優秀助演男優賞を受賞。劇団本公演の他、オフィス鹿プロデュースVOL.M『不届者』、木ノ下歌舞伎『東海道四谷怪談―通し上演―』、M&Oplaysプロデュース『皆、シンデレラがやりたい。』など様々な作品に出演。2018年はEPOCH MAN『Brand new OZAWA mermaid!』の他に、新感線☆RS『メタルマクベス』disc1とdisc3に出演予定。

- EPOCH MAN(えぽっくまん)
虚構の劇団に所属する俳優・小沢道成が、2013年から始めた演劇プロジェクト。人(特に女性)の心の中をえぐり出すような作風と、繊細かつ粘り気がありながらスピード感ある演出が特徴のひとつ。問題を抱えた人物が前進しようとした時に生まれる障害や苦悩を丁寧に描きつつも、演劇ならではの手法で会場を笑いに誘う。上演時間:70分〜80分以内を目指すお尻に優しい時間設定毎公演ごと、外部で出会ってきた好きな俳優・スタッフ陣、様々な仲間を巻き込むプロデュース企画を展開していく。
基本的に、舞台の面白さを決めるのは、作・演出だと思う。どれだけ俳優が獅子奮迅しても、屋台骨となる作・演出が脆弱では限界がある。俳優が「呼ばれる側」である以上、本人の努力だけではどうしようもない部分があることは否定しづらいだろう。だがその中で、この人が出ている舞台はハズレがない、と思わせてくれる俳優がいる。そのひとりが、小沢道成だ。鴻上尚史が主宰する虚構の劇団の一員として頭角を現し、根本宗子、谷賢一、中屋敷法仁など人気演出家の作品に次々とキャスティング。新感線☆RS『メタルマクベス』の出演も決まるなど、今、小劇場界で最も飛躍が期待されている有望株だ。
だが一方で、彼には作・演出家としての顔もある。そのベースキャンプとなるのが、本人による演劇プロジェクト・EPOCH MANだ。2013年より活動を開始。年1本のペースで公演を重ねているのだが、それが決して俳優の片手間のお遊びというレベルではなく、常にあっと驚くアイデアとギミックに満ちあふれているのだから底が知れない。
役柄ごとに多彩な表情を見せ、俳優/作・演出家という領域も軽やかに飛び越えるその存在は、さしずめどんなカードにも成り代われるワイルドカード。変幻自在の“ジョーカー”・小沢道成の今を、ここに記してみたい。