2017.04.21

【公演直前インタビュー】ポップンマッシュルームチキン野郎『死なない男は棺桶で二度寝する』『オハヨウ夢見モグラ』

【公演直前インタビュー】ポップンマッシュルームチキン野郎『死なない男は棺桶で二度寝する』『オハヨウ夢見モグラ』

前回、稽古場の模様をお届けしたポップンマッシュルームチキン野郎。初の2本立て、そして若手大抜擢と企画性の高い今回の公演について、主宰の吹原幸太さんが胸の内を語ってくれました。

ポップンマッシュルームチキン野郎

吹原幸太の脚本・演出作品を上演する劇団。
2005年結成。2014年秋公開映画『日々ロック』やNHKアニメ『ガッ活!』等々、多方面で活躍中の脚本家・吹原幸太が、愉快な仲間達を道連れに、親の仇を討つかの如く危険な笑いと愛に挑む!
荒唐無稽のK点越え!!それが【ポップンマッシュルームチキン野郎】である。
F1のようなスピード感!圧倒的な筆力と演出力!そして人知を超えた驚異の演技力!
それらをフルに活用してナンセンスな笑いと重厚なドラマを同居させ、通常では相容れないようなアンビバレントな感情を呼び起こす悲喜劇を得意とする。
これまでに、2012年度サンモールスタジオ最優秀演出賞、2013年度黄金のコメディフェスティバル最優秀作品賞、優秀演出賞を受賞している。

いろんな劇団員が主役を張れる劇団でありたい。

今回は、長篇1本と短篇集の2本立て公演ですね。

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長篇の『死なない男は棺桶で二度寝する』を書いたのは今から7年前。これは、初演の後、ラジオドラマにもさせてもらった思い出深い作品です。ラジオドラマにするとき、一度お話を解体して、もう一度再構築させてもらったんですけど、その行程の中で「演劇でもまだまだ全然やれたんだな」という発見がたくさんあって、ずっといつかまたやりたいと思っていました。それで、2本立てでやることが決まったときに、まずこの作品を候補に挙げたんです。

短篇集については、これまでもやったことがあると聞きましたが。

actor-gekioshi01

短編集は今回で3回目です。

劇団でやっている以上、PMC野郎ではこういうものが見たいというお客様からの期待がある。長篇の場合、その期待を悪い意味で裏切りたくないというか。ラーメン屋さんでカレーを出すわけにはいかないみたいな気持ちがあるんです。

でも短篇なら、ホラーだったり、サスペンスだったり、ミステリーだったり、ひとつひとつの作品の味が違っていても、全体の味がきちんとラーメンになってさえいれば成立する。コメディじゃなくてもいいし、泣けなくてもいい。いろんな物語をいっぱいつくれる楽しさがありますね。

確かに僕の知っているPMC野郎とはまったく違う雰囲気でした。

actor-gekioshi01

劇団員にとってもすごくプラスになっていて。俳優である以上、やっぱり同じような役をやり続けるより、どんどん違う役にチャレンジした方が絶対にいいと思うんです。たとえば映画俳優がキャリアを踏もうとしたとき、『スターウォーズ』のルーク役をやった俳優が次回作も同じようなヒーロー役はたぶんやらない。

でも、劇団の場合、どうしても同じような役回りが回ってきてしまいがち。そこが劇団活動の弊害だし、それを解消するのが短篇だと思います。短篇なら、いろんな作品のいろんな役をやってもらえる。普段主役を張らないポジションの俳優にも、思い切って主役を与えられる。僕のここ1~2年の目標が、いろんな俳優にいろんな芝居の主役をやってもらうことなので、その目標を今回の公演でカタチにしたいです。

 

今回は、吉田翔吾さんと野口オリジナルさんというフレッシュなおふたりが主役です。ふたりの様子はいかがですか。

actor-gekioshi01

いいと思います。もちろん稽古中なんでまだまだなところはいっぱいありますけど、ふたりとも今の時点でもうすでに稽古に入ったばかりの段階と違ってきている。稽古中はこのふたりの成長のことばっかり考えているので、僕も楽しいです。

おふたりについてお話しいただければ。

actor-gekioshi01

吉田くんはお芝居が上手い子。すごく器用なんですけど、でも芝居の世界にはそれだけじゃ辿り着けない領域があって。俳優は、その人しかできないお芝居をできるようにならなきゃいけない。器用な俳優って、つまりは誰もできるお芝居を全部できる人とも言えるんですよね。

吉田くんもそういうところがあって。今回はそうではない、吉田くんにしかできないお芝居の域に到達させてあげたかった。まだまだではありますけど、いい感じですよ。すでに僕の想像より断然面白い作品になっていると思います。

野口さんはいかがですか?

actor-gekioshi01

野口くんは、僕の中でそんなに器用じゃないイメージだったんですけど。この2~3年の間にすごく変わったというか、目に見えて面白くなったんですね。それを実感したのが、ホットポットクッキングというプロデュース公演に野口くんに出てもらったとき。そのときの野口くんが面白くて、これなら劇団でも主役をやれるって自信が持てました。

この2~3年の間に、彼はすごくたくさんの舞台に出ていて。僕以外の演出家の方たちからいろんなことを教えてもらった。たぶん彼は芝居のことしか考えてない。僕、彼のプライベートは全然知らないんですけど、たぶんお芝居して家で酒飲んで寝てるだけじゃないですか(笑)。それくらいストイックだし、そのストイックさがようやく実を結んできたんだと思います。年をとって、確実に前よりカッコよくなった。たぶん今回の野口くんはすごいことになるんじゃないかという予感があります。

劇団がないと、きっと僕は何も書けなくなると思う。

ふたりがセンターだからこそ、加藤さんや小岩崎さんなど脇を固める先輩劇団員の存在感も際立ってますね。

actor-gekioshi01

そうですね。イキイキしているというか。普段やれないことをいっぱいやってもらっているので楽しそうです。やっぱり同じような役をやっちゃいけないんですよね。そこは劇団のいいところでもあるけれど、俳優が停滞する可能性があるなと思います。

加藤慎吾を主役にしてやるのは簡単なんだけど、今回で言えば絶対吉田くんを主役にした方が劇団にとってプラスだし、僕にとってもプラスです。楽しちゃいますから、加藤慎吾が主役だと。僕も成長が止まっちゃうと思います。勇気を出して、どんどん新しいことをやらないと。毎回主役が違うのが劇団としては理想のカタチ。そのためにもみんなにもっと頑張ってもらいたいし、僕も頑張りたいです。

 

吹原さんで言えば全話書き下ろした連ドラ『ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』のOAがスタートするなど多方面でのご活躍が光ります。自分のフィールドが広がっていく中で、改めて劇団で創作活動をする意義は何ですか。

actor-gekioshi01

極論を言うと、劇団って自分のためにやっているところがあるんですね。オリジナルの本で、自分の好きなように演出して、衣装とかいろんなところも含めて全部自分でコントロールして作品づくりできるなんて環境、自分で劇団を主宰しないと100%ありえない。

もちろんいただいたお仕事はどれもありがたいですし、ひとつひとつ全力を尽くしていますけど、脚本だけ、演出だけのお仕事のみをやり続けていると、ものすごく大切なものを忘れてしまうような気がするんですね。

単純にすごく楽しいんですよ、劇団で演劇をつくるのって。劇団員たちのことを考えて、この人たちをどうすればもっと良くできるかに知恵を絞らせる。その作業が大好きなんです。

劇団なしで生きていけと言われる方が僕にとってはしんどいこと。たぶん書けなくなると思うし、人として面白くなくなると思います。それくらい僕にとって劇団は大事な場所なんです。

INFORMARION

今度のPMC野郎は2本立て。深い眠りにつきたい男と、夢の話をしたい男のこの世でもっとも不幸せなハッピーエンドの物語。ひと公演のみでももちろん楽しめますが、両方見ることで、いつもとちょっと違う吹原ワールドを一層深く味わえるはず。
劇場に入った瞬間、お客様は愛する家族。こだわりの演劇ファンから、小劇場に来るのは初めてというお客様まで、フレンドリーに迎え、楽しませるのがPMC野郎イズムです。環境の変化も落ち着き、ちょっと気持ちが塞ぎがちなこの季節。憂鬱な五月病もPMC野郎を見て思い切り吹き飛ばせ!

『死なない男は棺桶で二度寝する』

悠久の時を、ただ一人孤独に生きていく不死身の男。聖徳太子とイントロクイズに興じ、織田信長に王様ゲームを教えた彼の孤独を、誰も知る事は無い。何故なら、彼の正体を知ってしまった者は、誰一人として彼の事を覚えていられないからだ・・・。
一方、現代。恋人の六郎と別れようかと悩む記者の信子は、取材先の精神病院で、不死身の男の存在を聞く。
やがてそれは六郎や自身の家族、果ては時の総理大臣まで巻き込んで、遥かなる人類の歴史に、小さなうねりをもたらしていく。
自分自身の境遇を呪い、その悩みを誰とも共有できない孤独な男。
終わりなきパレードの果てに死なない男が行き着く先は、限りなく孤独な生か、限りある幸福な死か?

■作・演出・出演

吹原幸太

■出演

吉田翔吾 小岩崎小恵 加藤慎吾 野口オリジナル
増田赤カブト NPO法人 高橋ゆき 井上ほたてひも 横尾下下
(以上、ポップンマッシュルームチキン野郎)

橋本瑠果(ワタナベエンターテインメント)

<アンサンブル>
吉澤孔大(メタリンク) 横見恵

『オハヨウ夢見モグラ』

~ミケランジェロは言った。『私は作品を彫るのではない。石の中に埋まっている彫刻を取り出すのだ』~
幼少期の事故が原因で、365日のうち、たった1日しか起きることが出来なくなった男がいた。
事故から15年が経った今でも、彼にとってはたった2週間しか経っていないのと同じ。その精神状態は依然として少年のままだった。
そんなある日、彼は「夢の中で思いついた」という物語を次々と語り出す。だがその内容は、およそ少年の頭脳で考えたとは思えない程に複雑怪奇で、時に奇妙奇天烈で、そして時に学術的な命題を抱えていた・・・。
「・・・彼の中には物語が埋まっている。ミケランジェロの前の石と同じだ」
365分の1に濃縮された人生を送ることになった男が語る、様々なジャンルのストーリーを綴る珠玉の短篇集。

■作・演出・出演

吹原幸太

■出演

野口オリジナル NPO法人 加藤慎吾 小岩崎小恵
増田赤カブト 渡辺裕太 吉田翔吾 高橋ゆき 井上ほたてひも 横尾下下
(以上、ポップンマッシュルームチキン野郎)

橋本瑠果(ワタナベエンターテインメント) 今井孝祐

<アンサンブル>
吉澤孔大(メタリンク) 横見恵


■日程

2017年5月3日(水・祝)~14(日)

■会場

シアターKASSAI

■チケット料金

<自由席>3,800円

<未成年(自由席)>2,000円

<オーダーメイド席(指定席)>4,300円

※未成年(自由席)に関しては、中学生以上の方は、要身分証。R-18 は取扱無。

※オーダーメイド席(指定席)は、劇団WEB予約(こりっち)でのみ取扱。御希望に沿ったお席を指定できます。「小さい椅子でもとにかく最前列」「中央の通路沿い」「後方センターの全体が見える席」など、ご希望を何でも備考欄にお書きください。座席をキープ致します。

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